蔵春閣(ぞうしゅんかく) 新発田市に移築された大実業家の名建築

2023年5月27日土曜日

豪農・豪商の館 新潟県

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今年の4月末、新潟県新発田市にある蔵春閣という建物の一般公開が始まりました。
この建物は新発田市出身の大実業家、大倉喜八郎の別邸の一部として東京の向島に建てられたものですが、紆余曲折あって主の生まれ故郷に移築されたのでした。
見どころがたくさんあったので書いていきます。
訪問:2023年5月20日

新発田駅から歩いてすぐ

新発田駅を出て左へ進んでいくと和風な見た目の建物が見えてきます。
これが蔵春閣。去年、移築工事中の様子は目にしていましたが、こんなに堂々とした姿だとは。
案内看板がありましたが、この建物がある公園自体、大倉喜八郎の寄付したものだそうで。
蔵春閣は1912年、大倉喜八郎が76歳のときに建てられました。
その後、千葉のほうで中華料理店になったり結婚式場の宴会場になったりしましたが、2017年に新発田市へ寄贈、2020年からの移築工事を経て公開に至ったということです。
ここから見えている鳥居です
看板の裏側には諏訪神社があって観光地然とした一角となっていますが、その神社の鳥居も大倉喜八郎が奉納したものだとか。すごい。。
外側は純和風な感じ
入り口はこちら(南側)
二階の出窓みたいになっている部分が既に気になります。

蔵春閣 一階

靴を脱いで中へ入ります。
これが全体図ですが、まさか開館から3週間くらいで1万5000人を達成したのでしょうか。
6月末までは入館無料なので人はそれなりにいましたが、それほどとは…
まずは一階の食堂を見に行きます。その前の廊下。
人が溜まっていたのであまり撮りませんでしたが、欄間も吊り下げられている電灯の飾りもすごい。
取っ手も細かい
食堂の入り口が引き戸ではないのは洋風ですが、造りは和箪笥のような。
不思議な感覚です。
ここから食堂ですが、入ってこの光景を見てかなり感銘を受けました。
洋風な椅子と机、シャンデリアがあるのに天井は金色の格天井、隣の部屋との間は襖になっているという和洋折衷の極みのような部屋です。
この格天井だけで来たかいがあると思えるほどの見事さです。
中に描かれているのは鳳凰でしょうか。
照明の綺麗さについてはもはや何も言うまい。。
横写真でも。この部屋は食堂2と呼ばれているようですが、右隣が食堂1です。
そちらにもテーブルと椅子があり、テレビで流されている大倉喜八郎や蔵春閣の紹介ムービーを観ることができるスペースとなっていましたが、人が多かった&食堂2に気を取られすぎたためにあまりゆっくり見に行かなかったのを少し後悔。
谷文晁の作
食堂のお隣には書斎があります。ここは天井がすごい。
中央の龍の迫力がすごいですが、それを囲むように鯱の絵が24枚も並んでいるのがよりいかつさを増しています。
この部屋で一番目を引かれたのが、部屋の隅にある螺鈿細工の戸棚です。
螺鈿が細かーく張り付けられています。
何よりも、この棚が張作霖から贈られたということが驚きでした。
あとは隣のお部屋、次の間との間にある欄間もすごかった。
鴨が透かし彫りになっています。こんな細かいものを…
すごい躍動感
次の間の襖は狩野山楽の筆ということです。
日本画は全然詳しくないですが、さすがに狩野派くらいはわかります。

二階 広縁

ここからは二階へあがります。
最初の廊下から、何だかすごい装飾の付いた階段へ。
角の木材を見るとすごい曲がり方をしています
照明の飾りも素敵
人の波が途絶えるのを待っての一枚。
このような歴史ある建物の階段にしては急ではないし幅も広くて上り下りがしやすいです。
天井も高いので開放感もあります…!
角にある小さな照明も芸が細かい。家に欲しいです。
戸も凝っている
階段を上った先でまた驚きましたね~この大理石の床だけでも珍しいのに何より目を引くものがあります。
このタイルのモザイク張りはずっと見ていられそうな魅力があります。。
桜の花にツタのような緑、外側にある青と黄の波のような模様。
鮮やかな色の並べ方が美しいです。
近くで見ると組み合わせの細かさがよくわかると思います。
タイルが好きな人は多いと思われますが(私もその一人)、一度見に来てほしいものです…!
桜のほかには都鳥モチーフのものもありました。かわいい。
このスペースは広縁と呼ばれているようですが、桜と都鳥が交互に計5枚のモザイクがありました。
広縁の窓からは諏訪神社が見えます。
向島にあった当時はここから隅田川を望めたそうです。
ちなみに、ここの窓ガラスも一階の食堂の窓ガラスも、この時代のガラス特有の微妙なうねりがありました。
床ばかり見ていましたが、ここは天井もお見事!
詳しい意味はわかりませんが、吹寄化粧軒裏天井というそうです。
次はいよいよ最後の部屋、大広間へ入ります。

二階 大広間

いきなりですがこちらが、大広間の天井です。
現地でこれを見たときは思わず息をのんでしまいましたね。。
ドイツの高官から贈られたというシャンデリアに、金箔(11kg使ったらしい)を張り付けた特殊な格天井です。
蜀江組折上げ格天井という様式のようです。
格天井はよく見ますが、折り上げの格天井は初めて見たと思います。いや美しい。。
八角形と四角形を組み合わせ、中央にあるのは菊だそうです。
折り上げ部分の曲線から八角&四角の組み合わせが見ていて楽しい。。
たくさんの人が上を見上げていました。
床は畳敷きで、33畳あるようです。
しかもこのお部屋は会合や宴会に使うことができるようです。
建築好きな方々の会合にいかがでしょうか。
床の間
床の間から続く一段高くなっている部分。
その南側は月見台というスペースになっています。
外で見たときに張り出していたのはここだったんですね。
手すりが網干を模しているのが注目ポイントでしょうか。
釣鐘のような襖。外に見えるのは王紋酒造。
お顔隠しの加工をしています
豪華絢爛といった大広間でした。
この時はガイドさん(というより管理団体の方?)が各フロアにいて、質問をすれば答えてくれるようでした。
というわけで蔵春閣をじっくりと見てきました。
あまりに見事なところが多くて視野が狭くなり、後になってからあそこも見ておけばよかった~と思う場所がいくつかありましたが、たいへん満足でした。
6月末までは入館料が無料ということもあってか思った以上の人出でしたが、これはかなり見る価値があると思います。
最後に、新発田駅からあるいてすぐの駅前公園にある大倉喜八郎像を。
あの渋沢栄一とも肩を並べられるような大実業家が新発田出身ということは私はここ何年かで知ったのですが、調べれば調べるほど偉大だと感じるばかりです。
この公園と奥の病院は大倉製糸の工場跡地ですが、新発田に工場を建てたり、たびたび寄付をしたりと、なかなか地元愛のある方だったのかなと思いました。
喜八郎翁にも、蔵春閣を新発田に移築しようと計画された方々にも感謝です。
周辺も観光地らしき良い雰囲気がありますし、多くの人に訪れてほしいものです。
資料として年表を撮りましたが、なかなかおもしろいので上げておきます。

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